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更生支える牧師 半生記

 更生支える牧師 半生記

 

  • 「非行少年が変わっていく姿を見るのが何よりうれしい」と話す野田さん(東大阪市のアドラムキリスト教会で)
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      ◇暴走族、覚醒剤・・・私もやり直せた

      10代の頃に暴走族で暴れ回り、覚醒剤にもおぼれた男性牧師が、自身の半生をつづった本を出版した。聖書の言葉で立ち直り、戸惑いながらも少年の更生を支える側になった現在までの歩みを、率直な言葉で記している。「人生につまずいた少年らの、一つの道しるべになれば」と話す。(久場俊子)

      東大阪市で教会を運営する牧師、野田詠氏(えいじ)さん(39)。2月20日、「私を代わりに刑務所に入れてください 非行少年から更生支援者へ」(いのちのことば社)を出した。

      野田さんは、中学卒業後に仲間とグループを結成。金属バットやナイフで武装し、交番を襲った。

      〈チームの名前が売れることがすべてだった。大阪で最大の暴走族になることが夢だった〉

      17歳で覚醒剤に手を出した。身長1・86メートルで体重が五十数キロにまで落ちた。

      〈夜眠る時には、誰かが襲って来ないかと不安だった(中略)。枕元にナイフか包丁がないと寝つけない、そんな人間になっていた〉

      転機は、少年院に入った19歳の時。命を狙われる生活に疲れ果て、兄が差し入れた聖書の一節「神の前で隠れおおせるものは何一つなく」という言葉に心を打たれた。

      〈突然、私は背後に神の視線を感じた。(中略)もう悪いことはできない……、そう思った〉

      出院後、神学校に入学、アルバイトでためた資金をもとに教会を開設した。アルバイトと掛け持ちで教会を運営し、非行少年の更生に心を砕くが、簡単にはことは運ばなかった。

      〈こんなに裏切られることが少なくない活動は、しんどいからやめようと思うことも時にはある〉

      それでも、むなしい罪を犯して幸せになれなかった自らの経験を踏まえて、訴えるように記す。

      〈不完全で弱く足りないからこそ、私に与えられている使命だと感じるから、この活動をさせてもらっている。こんな自分でも変われたから、変われる、やり直せると言いたい〉

      タイトルは、昨年9月に亡くなった母親が、裁判官に向かって泣きながら叫んだ言葉から取った。少年院での講演活動も続ける野田さんは「こんな過去を本に残していいのかと悩んだが、必要なときに、何度でも読み返してもらえると思った。子育てに悩む保護者にも読んでもらいたい」と話す。

      税込み1080円。全国の書店で注文できる。