五輪を紹介

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若者心 こぶしで震わす

 若者心 こぶしで震わす

 ◇学生浪曲師 5月公演へ稽古

  • 「若い世代に楽しんでもらえるネタを披露していきたい」と張り切る京山幸太さん
  •   上方浪曲界に3年ぶりの新人としてデビューした枚方市の関西外大2年、京山幸太さん(20)が、5月の国立文楽劇場公演に向けた稽古に励んでいる。高校を中退し、バンド活動にのめり込んだあと、魅せられた畑違いの道に進んで1年半。何度も痛めながら鍛えたのどで通を沸かせ、同じ世代のファンの心をつかめる浪曲師を目指す。(広瀬毅)

      ここで短気は そりゃならん ぐっとこらえて 笑い顔――

    • 師匠の幸枝若さんに指導を受ける表情は真剣だ(大阪市東淀川区で)

        5日夜、大阪市東淀川区の貸しスタジオの一室。師匠の京山幸枝若(こうしわか)さん(60)が見守るなか、曲師の一風亭初月(はづき)さんの三味線にあわせてみっちり2時間、仁侠(にんきょう)物「夕立勘五郎(ゆうだちかんごろう)」のせりふと節を練習した。師匠からは「しゃべりが早い」「もっと感情を出さんと」と指示が飛ぶ。

        兵庫県加古川市出身で、本名は山本壮秀(まさひで)。中学時代にヘビーメタルのバンドを結成し、ボーカルとベースを担当した。「音楽で生きていきたい」と高校をやめたあと、高校卒業の認定試験を受け、好きな英語が学べる同大学への進学を決めた。ただ、その後も将来の目標が定まらず、迷っていた。

        転機は、ツイッターで相談した作曲家からの言葉。「日本の芸にも興味がある」と伝えると、「一度、浪曲を聞いてみては」と勧められた。2013年3月、幸枝若さんの教室を訪ね、口演に感激して門をたたいた。

        熱意を買われて同年9月、入門を許され、以来、学業と両立しながら浪花節として親しまれてきた様々な作品の暗記や、発声練習などを続けている。「夜、淀川の河川敷で大声を出していて、バイクの集団に取り囲まれたこともありました」と笑う。

        幸枝若さんは「感情や、こぶしが出るようになってきた。1年半で3年分くらい、やれている」と話し、「人の心を打つ浪曲の魅力を、自分のやり方で引き出してほしい」と期待を寄せる。

        「現代風にアレンジした方が、お客さんにも楽しんでもらえる」。幸太さんは先人にならい、言葉遣いをわかりやすく言い換えている。「ばかなことを申すな」は「あほなこというな」、「流行歌」は「ヒットソング」といった具合に。「若い世代に楽しんでもらえるように工夫したい。そのためにも、いまは基礎をしっかり身につけたい」

        3年で年季明けといわれる世界で、折り返しを過ぎた。5月30日の公演に向け、幸太さんは「お涙ちょうだいだけではない魅力を発信して、幅広い年代のお客さんを引きつけたい」と意気込む。