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「姫路木綿」復活夢見て

 「姫路木綿」復活夢見て

 江戸時代、姫路藩の家老・河合寸翁が財政難の藩を立て直すために活用した姫路木綿(◎)を特産品として復活させようという計画を、姫路市船丘町の木綿製品店「棉(わた)屋」社長の沢田善弘さん(55)が進めている。できる限り江戸時代の生産方法を再現し、今夏にもスカーフなど雑貨の商品化を目指す。(藤本綾子)

  • 姫路木綿の復活を目指す沢田さん(姫路市船丘町の棉屋で)
  •   沢田さんの家は明治時代から続く老舗の綿花卸会社。「暖かく、安らぎを与えてくれる」と若い頃から木綿に魅了されてきた。2003年からは休耕田を借りて、地域住民や小中高校の児童生徒と一緒に綿花を栽培したり、姫路木綿の歴史を調べたりしてきた。

      特に興味を持ったのが、寸翁の功績だった。専売制を始めたことで有名な寸翁だが、ほかにも細かな分業制を採用するなど生産方法にも工夫を凝らした。明治以降は廃れてしまったが、「今の時代に生かせるものがあるかもしれない。姫路木綿でもう一度姫路を盛り上げたい」という思いが次第に強くなっていった。

      近年、オーガニック商品への関心が高まっていることも追い風になった。江戸時代のように無農薬・手作業で製品を作れば、一般的な木綿製品に比べ高価になる。それでも「今なら、その価値を理解してくれる人もいるはず」と商品の開発に踏み切った。

      生産はできる限り、当時の方法を再現。昨年は姫路市周辺の休耕田約1500平方メートルで綿花を栽培したが、農薬は使わず、つみ取りも手作業で行った。綿花から種を取り出す作業は同市内の障害者施設が担当。綿を糸にする工程は一部で機械を使う以外は、糸車を使って紡いで手織りで仕上げる。「障害がある人の活躍の場になり、糸紡ぎや機織りの技術を守ることにもつながる」と沢田さん。今年は栽培面積を増やすことも検討している。

      7月頃には第1弾としてスカーフなどを販売する予定で、沢田さんは「商いとして成り立てば、ほかにも姫路木綿をやりたいという人が出てくるかもしれない。姫路木綿の輪を広げていきたい」と力を込める。問い合わせは同店(079・294・5555)へ。

     (◎)姫路木綿 播磨地域は温暖な気候が綿作に適し、江戸時代末まで盛んに行われた。姫路藩の家老河合寸翁は木綿の専売権を得て、大坂の商人を通さずに直接江戸で販売することで、藩の膨大な借金を解消することに成功した。姫路木綿は色が白く、生地が柔らかかったことから「姫玉」と呼ばれ、高く評価された。しかし、明治時代に安価な外国産綿花が輸入されるようになり、壊滅した。