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<企業年金消失>AIJ前社長、2審も懲役15年

 <企業年金消失>AIJ前社長、2審も懲役15年

 AIJ投資顧問(現MARU)による企業年金消失事件で、詐欺罪と金融商品取引法違反(契約の偽計)に問われた前社長の浅川和彦被告(62)の控訴審判決で、東京高裁は13日、求刑通り懲役15年とした1審・東京地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。井上弘通裁判長は「被害は巨額。科せる量刑の最高刑で臨んだ1審判決は重すぎない」と非難した。【島田信幸】
 
  ◇東京高裁、控訴棄却
 
  浅川被告は1審同様に「被害回復できると思っていた」と詐欺罪の無罪を主張した。判決は、被害に遭った基金は、AIJが実質的に運用するファンドの実績を信じて購入していたと指摘。「純資産額や運用実績を過大に偽ることは欺く行為にあたる」と被告の主張を退けた。弁護側は新たに約30億円を弁済に充てるとしたが、判決は「弁償の実現可能性が不明。量刑判断を揺るがすほどの影響はない」と判断した。また、浅川被告と共謀したとして同罪などに問われた元取締役の高橋成子(55)、AIJ傘下の証券会社(破産)元社長の西村秀昭(59)両被告=いずれも1審懲役7年=についても控訴を棄却し1審同様に3人に追徴金約156億9000万円を命じた。
 
  判決によると、浅川被告らは2009〜12年、17の年金基金に虚偽のファンド運用実績を提示。水増しした価格でファンドの権利を販売し、総額約248億円をだまし取った。
 
  ◇財政難露呈し制度縮小
 
  年金消失事件をきっかけに多くの厚生年金基金が財政難に陥っていたことが判明し、国は2014年4月、厚年基金の解散を促す年金制度改革関連法を施行した。
 
  今年2月末までに51基金が解散するなど、制度は大幅な縮小に向かっている。
 
  厚年基金は企業年金の一種で、厚生年金の一部を国から預かって運用する「代行」が特徴。しかし、リーマン・ショック(08年)による株価の落ち込みなどで、代行分まで不足する「代行割れ」が続出。事件発覚の12年3月時点で4割の基金が代行割れ状態で、虚偽実績で好調を装ったAIJが魅力的に映る背景があった。
 
  関連法は、代行割れした基金には5年以内の解散などを促しているが、厚生労働省によると、残る469基金のうち約6割の278基金が解散の意向を示しているという。【島田信幸】