五輪を紹介

五輪を紹介

アングル:欧州企業に広がる自社株買いブーム、投資拡大求める政治圧力も

アングル:欧州企業に広がる自社株買いブーム、投資拡大求める政治圧力も 

 [ロンドン 5日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)が来週から国債の買い入れを開始することが決まった。こうして供給される潤沢な流動性を背景に、欧州企業の自社株買いがさらに活発になると予想されるが、企業は資金を「リサイクル」するのではなく、成長に投資すべきとの批判の声も広がるとみられる。

 欧州企業は既に株主還元を積極化。ユーロ圏経済がさえないのと対照的に株価は堅調を維持している。ただECBが9日から1兆ユーロの刺激策を開始するなか、企業は低利で調達した資金で自社株を買うのではなく、雇用創出に充てるべきとする政治的圧力が強まるのは必至だ。

 米連邦準備理事会(FRB)の長年の緩和策を受けて、米国でも自社株買いが盛んになり、設備投資が軽視された。ロイターのデータによると、米企業は2009─14年に2兆ドル超の自社株買いを行った。

 欧州企業が米企業ほどの勢いで自社株買いを行うと見る向きは、今は少数派だ。しかし、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)(ABI.BR: 株価, 企業情報, レポート)やASML(ASML.AS: 株価, 企業情報, レポート)など、10社以上の欧州企業が今年に入ってすでに、およそ80億ドルの自社株買いを発表している。

 自社株買いへの意欲は今後、一段と高まるだろう。欧州企業はバランスシート上に1兆5000億ドルのキャッシュを保有するが、リターンを稼げる再投資先は少ない。借り入れコストが既に過去最低水準にあるなか、ECBの量的緩和(QE)で金利はさらに低下する見通し。そうなれば、自社株買いが手っ取り早い回答となるのもやむをえない。

 米国の例でも明らかなように、自社株買いには批判がつきものだ。バークレイズのリポートによると、米企業の資金の使い道としては設備投資が1位だが、自社株買いの増加ペースは設備投資を上回っている。

 PVCキャピタル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、マーティン・シュルツ氏は「企業の資金の使い道をめぐっては、議論が今後高まるだろう。特に欧州においては、政府と民間セクターのバランスをとるべきだという考え方が強い」と指摘する。「一般の有権者の間では、QEで企業は投資を増やし、有権者が全面的に恩恵を受けられるという認識がある。政治的な圧力が強まるだろう」との見方を示した。

 フランス企業は昨年、政治圧力を身をもって体験した。オランド仏大統領が、仏紙ル・モンドとのインタビューで、企業トップは税控除を配当に充てるのではなく、再投資や雇用に活用すべき、と釘を刺したのだ。 続く…

記事を1ページに表示する