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予定調和化する銀行のストレステスト

 [FT]予定調和化する銀行のストレステスト

 

  米国政府が2009年に大手銀行に対してストレステスト(特別検査)を開始すると発表したとき、それは見事な対応に見えた。当時、金融システムは危機で混乱し、投資家は米国の銀行の健全性に対する信頼感を失い、納税者は銀行の救済を強いられて腹を立てていた。銀行の帳簿を詳細に調べる公の検査であるストレステストの実施により、米連邦準備理事会(FRB)は透明性と信頼感の雰囲気を醸し出した。それはすぐに市場の地合いを改善し、国民の怒りを和らげるのに貢献した(ほんの少しだが)。

 米国の大手銀行に対して行われるストレステストの有効性が問われている=AP

 

  ストレステストが成功したため、米当局は欧州でも公のストレステストを実施するよう促した(残念なことに欧州は最近までこのアドバイスに耳を貸さなかった)。

  しかし、2009年のストレステストが機能した一方で、政策立案者が今問うべき問題がほかにある。ストレステストはもう有効性を失ったのではないか。こうウォール街の銀行幹部に尋ねると、大半がそろって「そう思う」と答えるのではないだろうか。

  FRBは実質的にストレステストを2つのパートに分けている。5日の報告は、大手銀行が十分な資本を確保しているかを示すものであり、11日に予定されている2度目の報告は、銀行の戦略的リスクの対応についてFRBが承認するか否かを示すものだ。

  米シティグループは昨年3月のストレステストで予想外の不合格となった。いまや銀行幹部の多くはFRBのこの2つのテストが行き過ぎていると批判する。彼らは、判定は不透明で予測不可能なため、テストが廃止されるか、元に戻してほしいと不満を漏らす。

 ■当局をうかがい「正しい」モデルを作成

  こうした身勝手な不平不満よりもさらに興味を引くのが、政府の他の部門である米財務省金融調査局(OFR)による介入である。今週、OFRのエコノミストのグループがストレステストを異なった見方で批判する衝撃的な調査結果を発表した。それによると、真の問題は、ストレステストの予想がつき過ぎ、使いものにならなくなっているということだ。必要なのは意外性を減らすのではなく、もっと盛り込むことだ。

  OFRの見解は、米国の大手銀行30行のデータを新たな複雑な方法で解析した結果に基づいている。これまで各銀行の結果はそれぞれ別々のデータとして見られる傾向にあったが、それをOFRは1つのチャートにまとめ、顕著なパターンを明らかにした。資産構成が一定のショックのモデル(大規模な景気後退、原油価格の高騰など)にさらされたときに銀行が損失を被るまでの道のりが銀行間でほぼ共通しているというのだ。